2012年 02月 11日

動脈硬化に関する講演会に行ってきました

先日、動脈硬化に関する講演会に参加してきました。

今回は、ある集団を長期的に追跡することにより、病気などの発症率とそのリスクを調査するコホート研究からのお話でした。

高知大学医学部公衆衛生学教室の宮野伊知郎講師から、20年以上にわたり高齢者の生活機能を中心に調査している高知県香北町の研究、九州大学医学部環境医学分野 清原裕教授から50年にわたって脳卒中や虚血性心疾患など様々な疾患の発症と危険因子を調査している福岡県久山町の研究についてお聞きしました。

宮野先生は、動脈硬化の指標とされる脈波速度を測定し、動脈硬化が強い高齢者は、3年後の死亡率が高いのみならず、転倒・骨折など様々な原因によって自立度が低下する割合が高いと講演されました。動脈硬化というと脳梗塞や心筋梗塞をイメージしがちですが、高齢者では、からだの部分部分が相互に関連していますので、検査の意義を解釈する場合も、全人的に一人の高齢者をとらえる老年医学的視点が大切であることを教えられました。

清原先生は、死因を剖検で確認している精度の高い疫学研究に基づき、日本人の高コレステロール血症の割合が増加していること、脳卒中のタイプも変化してきていること、などをお示しいただきました。多岐にわたる内容なので、一部しか紹介できませんが、ホームページ上にも研究成果が掲載されていましたので、興味のある方は下記リンクを参照ください。

特に興味深かったのは、高コレステロール血症が脳卒中の危険因子かどうか、各地の研究で共通の結論が出ていない理由について、脳卒中のタイプによって高LDLコレステロール血症が関与するかどうかが違うというお話でした。心原性脳塞栓症は、むしろ低コレステロール血症の人が起こしやすい、など、詳細な追跡調査が可能な久山町研究ならではの分析は勉強になりました。また、いったん脳卒中になると栄養状態が悪い(コレステロール値が低い)人は死亡しやすいので、脳卒中死と脳卒中発症リスクは区別して解釈すべきとの意見にも教えられました。

食生活の欧米化に伴い、脂質異常症とアテローム血栓性(動脈硬化性)の脳梗塞が増えている現在の日本においては、一人一人の動脈硬化のリスクや全身状態をよく評価した上で、コレステロールを下げる治療に取り組んでいくべきことを、再認識しました。


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by ookawa-naika | 2012-02-11 22:44 | 医療コラム
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